2026年9月27日更新

CFD シミュレーション

  かつて CFD (Computational Fluid Dynamics: 数値流体力学)と言えば、専門家がスーパーコンピュータで実施するものであり、コードのコンパイルやメッシュ生成だけで多大な労力を要しました(私もその専門家の一人でした)。しかし、現在ではツールチェーンが洗練され、オープンソース(OSS)を中心にローカル PC 上で完結する非常に快適な環境が整っていますので、ある程度の知識があれば、以下の CFD プロセスが比較的簡単に回せるようになりました。

1. 3D モデル作成(CAD・形状準備)

  CFD の前処理では、パラメータ指定による形状変更の容易さや、流体領域の抽出(幾何形状の引き算)および面張り修正(Geometry Clean-up)機能が重要視されます。

2. メッシュ生成(Meshing)

  CFD では壁面近傍の流動(y+y^+ や剥離、壁面摩擦)を解くために、壁面に沿った高アスペクト比の薄い層のメッシュで構成する必要があるため、生成が容易な Gmsh などのテトラ(4面体)メッシュはお勧めできません。ここでは、層状の6面体、7面体、8面体などで構成できる手法をご紹介します。

3. シミュレーション(ソルバー)

  方程式の離散化、並列計算処理、各種物理モデル(粘性・熱・多相流など)の実装領域です。

4. 可視化(Post-Processing)

  計算結果の解析および図・動画作成を行う工程です。

OpenFoam による CFD 解析例

  OpenFoam のチュートリアルにある motorBike の解析・可視化例を示します。 snappyHexMesh でメッシュを生成し、 OpenFOAM の \(k-ω \mathrm{ SST}\) 乱流モデルを使用した非圧縮性・定常解析ソルバーである simpleFoam で解析し、 ParaView で可視化しています。この際、OpenFOAM は、 Windows の WSL(Ubuntu26.04LTS)上にインストールし、ParaView は Windows 直下にインストールしています。
1990年代に風工学の分野で問題となったよどみ点付近の風圧係数の過剰予測(風洞実験値の 2 倍以上)を改善すべく私も努力しました(High-speed GSMAC-FEM and k-ε-φ turbulence model for wind engineering: 風工学のための高速型GSMAC有限要素法およびk-ε-φ乱流モデル)。この現象は、よどみ点付近の乱流エネルギーの過剰生産に起因しており、乱流モデルの改善が必要でした。OpenFoam の \(k-ω \mathrm{ SST}\) 乱流モデルは、これを抑制することができるため、下図の通り、良好な結果が得られています。
ただし、乱流エネルギーの過大評価が問題となるのは、よどみ点付近ばかりではなく、その後方や円錐渦と呼ばれる領域でも発生しますので、 \(k-ω \mathrm{ SST}\) 乱流モデルや定常解法が全てを解決する万能手法ではないことを承知した上で、自分の使用目的を達成することができる手法であるかを検証しながら適用することをお勧めします。
なお、乱流モデルを改良して実現象に近づければ近づけるほど、非定常性が出てきますので、定常解法が適用できなくなり、計算コストが爆発的に増加することを付記しておきます。この意味で、\(k-ω \mathrm{ SST}\) 乱流モデルは、実用的な手法の一つと言えるでしょう。
OpenFoam による motorBike 解析例


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